みなさんは、ハビリテーションという言葉をご存じですか?
ハビリテーションとは、「まだ身についていない力を育てていく」という考え方です。
よく知られているリハビリテーションは、病気やけがなどによって失われた機能の回復を目指します。一方、ハビリテーションは、生まれつき、あるいは発達の過程でまだ経験していない力を、成長の中で獲得していくことを支援するという発想に立っています。
この概念は主に欧米で発展してきました。
特にアメリカでは、小児神経学や発達支援の分野で早くから用いられ、医師や研究者たちが「人は回復するだけでなく、発達し続ける存在である」という視点が重視されてきました。
1950年代以降、グレン・ドーマン博士らによる発達支援の実践や、神経可塑性(経験によって脳が変化しうる性質)に関する研究の進展によって、この考え方は広く知られるようになりました。
現在では、アメリカやヨーロッパの発達支援や教育の分野において、ハビリテーションは重要な視点のひとつとされています。
発達を「遅れを補うもの」としてではなく、「これから育っていくもの」として捉える立場です。
この見方に立つと、支援の中心は訓練や指導そのものではなく、発達が起こりやすい条件を整えることに移ります。
安心して試せる環境、主体的に関われる経験、そして受けとめてもらえる人間関係。そうした要素が重なることで、自己調整力や対人関係の力など、時間をかけて育つ機能が少しずつ形づくられていきます。
つまり、ハビリテーションは特別な技法の名前というより、「人は育っていく存在である」という前提に立った支援の姿勢であり考え方です。
では、その前提に立ったとき、私たちは何を整え、何を急がず、何を信じればよいのでしょうか。