初心者の親のために作られた、問題を予防・解決のための人間関係の技法
青少年の心理療法をする中で気づいた、親への教育
大人たちは「問題を起こした子どもを更正させよう」としたのですが、実際に博士のもとに連れてこられた子どもたちの言い分は、まったく逆。
ゴードン博士は、「若者たちは正常で健康、実際に問題をかかえ、カウンセリングが必要だったのは親や先生」だと気づきました。
しかし親や先生に、自分たちの方がセラピーや治療が必要だとわかってもらえませんでした。なぜなら実生活においては極めて上手く機能しているからです。
若者もその親もどちらも治療を受ける気もなく、実際受ける必要もない状態。しかし、これらの家庭では治療を受ける必要はなくても、お互いに調和を保ちながら生活をすることができないでいるのは明らかでした。
など、人間関係に不可欠な技術を身に付けている人がほとんどいないことに気づいた博士は、精神病理学上の問題でなく、ふつうの人間関係の問題としてとらえ直し、独自のプログラムを作ることを思い至りました。
民主的な家庭づくりのための親のリーダー訓練
博士はもともと企業の生産性を向上させる新しいリーダーシップを研究し、具体的な訓練プログラムを開発していましたが、企業のタテ社会の関係が、親子の関係に類似していることに気が付き、当時開発中だった「リーダー訓練法」を親の教育にアレンジすることを思いつき、親に子への適切な接し方を教える訓練が始まりました。
親はしろうとである
親は非難されるが訓練は受けていない。何百万という新しい父親や母親が毎年生まれ、人間の仕事の中でもいちばんむつかしい仕事につく。ほとんど何も自分でできない小さな人間の肉体的、精神的健康に全責任を負い、生産的、協調的でなにか貢献のできる社会人にそだてあげるという「親業」に。
これほど困難で、能力や努力を必要とする仕事がほかにあるだろうか。しかも、そのための特別な訓練を受けた親が何人いるだろう。
親業者のためにどんな訓練プログラムがあるというのか。親業を効果的に果たすために必要な知識や技能を、いったいどこで手に入れたらよいのだろう。
(書籍「親業」トマスゴードン著より)
瞬く間に全米に広がり全国的な運動へ
トマス・ゴードンは、親密で永続的な人間関係を築き維持していくための1つのモデルを創り上げた。人間関係についての抽象的な概念を、具体的な行動の技法(スキル)という形に変えそれを一般大衆の手に届くものとしたことによって、彼はまさに“心理学を人々に贈った”と言える。彼は当初、組織内での民主的なリーダーシップに必要な技法を開発した。それが後に、親、教師、夫婦、医療関係者、若者たちにも同様に効果のあることが証明された。ベストセラーになった彼の著書や、認定トレイナーによる世界的なネットワークは、27カ国におよぶ何百万人もの人々に、問題を予防し解決する道具を提供してきた。また、その人間関係の技法は、数え切れないほどのトレーニングプログラムの先駆けともなったのである。(ゴールドメダル受賞表彰状の文面より)
ゴードン博士のインタビューより〜効果的な親子関係のために知識と技能を〜
「私は17年前に、問題児は問題親がつくる、つまり 子どもの問題は親に責任があるのだ、ということに気づいて、それまで子どもの精神療法を行っておりましたのを、親に対する教育へ転換いたしました。(中略)私の親子関係についての考え方をひとつ紹介させていただくと、私は、たとえ親子関係であっても、親と子という二人(または三人)の 全く独立した人格をもつ人間同士の関係 である、と見るべきであって、絶対に子どもを親の所有物と考えてはならないと思います。 子どもの問題を親が自分の問題としてしまっているところに、今日の親子関係のひずみの大きな原因があります。 親は子どもの援助者に徹するべきであって、決して子どもの問題の解決者や決定者になるべきではないと思います。 子どもの援助者になることによって、子どもは自ら自立性を育て、また他人への思いやりも育てていくのです。
日本でも、最近子どもの問題が重要な社会問題になりつつあると聞いていますが、子どもが非行や暴力行為に走ってしまう以前に、実は家庭での親子関係の不健全さが影響している場合も多いものです。子どもに必要な時に十分な愛情を与え、必要な時に十分自律的に行動できるような訓練がされていない ということではないかと思います。」
1981年来日記者会見およびインタビュー 月刊「教育の森」81年11月号より
日本でのゴードンメソッドのあゆみ
日本国内で45年の実績
親業訓練協会顧問一覧
〇 | 近藤千恵 | 元親業訓練協会理事長 |
東 洋 | 東京大学教授・学習心理学2016年12月13日没 | |
〇 | 柏木恵子 | 東京女子大学教授・発達心理学 |
井内慶次郎 | 日本視聴覚教育協会会長・法学 2007年12月25日没 | |
近藤邦夫 | 元東京大学教授・教育学 | |
〇 | 詫間武俊 | 東京国際大学教授・心理学 |
土橋信男 | 北星学園大学名誉教授・教育行政科学2012年7月7日没 | |
花沢成一 | 聖徳大学教授・臨床心理学 | |
平井信義 | 大妻大学名誉教授・児童心理学2006年7月7日没 | |
〇 | 平木典子 | 日本女子教授・臨床心理学 |
星野 命 | 国際基督教大学名誉教授・心理学 | |
〇 | 本田恵子 | 早稲田大学教授・臨床心理学 |
〇 | 牧野カツ子 | お茶の水女子大学・教育学 |
法務省保護局「保護者のためのハンドブック」推薦
家庭環境の安定は大変重要であり,そのためには少年と保護者との間でのコミュニケーションがうまくいき,親子の関係が良好に保たれることが必要です。法務省保護局では,非行をした子どもの親として悩んでおられる保護者の方々の参考としていただくために,子どもとのコミュニケーションを図る方法などを記載したハンドブックを作成しました。このハンドブックは,保護観察を受けることになった少年の保護者に配布するなどして活用しますが,保護観察を受ける少年に限らず,御自身の子どもの非行や問題行動に悩む保護者の方々にも,親子のコミュニケーションをより良くする上で参考になると思いますので,是非御覧ください。(法務省保護局HPより転記)
アンガーマネージメント研究会
多くの学校、保育園が園ぐるみで採用