教師の仕事は、この数十年で大きく様変わりしました。
膨大な事務作業や部活動指導がニュースに取り上げられる一方で、実際に先生を最も疲弊させるのは 「人間関係」 ではないでしょうか。
生徒とのやりとり、保護者との関係。
努力が伝わらず、信頼が築けないとき、教師は深いストレスや虚無感に襲われます。
逆に、もし良好な関係性があれば——。
多少の忙しさもやる気やアイデアに変わり、仲間と共に困難を乗り越えた経験は、後から「人生の宝物」として記憶に残るはずです。
では、どうすればその「関係性」をつくれるのか?
ここで登場するのが 「教師学」 です。
教師学との出会い ― 教師の声から
私のもとに、ある高校の先生からご相談がありました。
荒れる生徒たちに精一杯向き合い、家庭訪問まで重ねても成果が見えず、教師を続ける自信を失っていた方です。
「もう辞めようかと思った」
その先生は、そんな限界の中で「親業」や「教師学」の存在を知りました。
最初に親業訓練を受講され、そこで触れた「心理学に基づく原理」と「具体的な伝え方」に衝撃を受けたといいます。
そして教師学に進むことで、生徒との関係に驚くような変化が生まれました。
教師も人間 ― そのジレンマにどう向き合うか
教師には「生徒を導きたい」という思いと、「すべてを受け入れるのは難しい」という人間としての気持ちが同居しています。
この葛藤は誰もが抱くものです。
だからこそ大切なのは、完璧さを目指すのではなく、誠実に対話し、問題を共に解決できる関係を築くこと。
教師学はそのための 「対話力」 に焦点を当てています。
具体的にどう変わるのか?
ある先生が学んだのは「能動的な聞き方」。
ただ耳を傾けるのではなく、生徒の気持ちを理解しようと働きかける聞き方です。
実践すると、生徒が落ち着き、自分から悩みを話し始め、授業への姿勢も変わっていきました。
先生自身も「聞けていなかったこと」に気づき、関係づくりの転機となったのです。
こうして生まれる好循環は、短期間であっても大きな手応えをもたらします。
教師学がもたらすもの
教師学で得られるのは、単なるテクニックではありません。
それは 「生徒を育てる関係性の軸」 です。
生徒の成長を支えるだけでなく、教師自身の人間的成長にもつながります。
そして離職率が問題となる今、「具体的にどう関係を改善すればいいのか」という問いに答える確かなヒントがここにあります。
教師が自分らしく自信を持って生徒に向き合えること。
それは、教師にとっても生徒にとっても、かけがえのない財産になるはずです。