「先生、なんか集中できません」
「つまらない」
「疲れた」
教室で日常的に耳にするこんな言葉。
あるいは、言葉に出さなくても、机に突っ伏したり、落書きばかりしたり、隣とおしゃべりに夢中になったり…。
教師であれば誰しも、「どうすればいいのだろう」と悩む場面ですよね。
多くの先生はこう考えます。
「もっと工夫して授業を面白くしなければ」
「注意して集中させなければ」
「このままでは学力が落ちてしまう」
もちろん、授業改善は大切です。しかし、それだけでは解決しないのが現実。なぜなら、生徒が集中できない理由は“授業そのもの”にあるとは限らないからです。
生徒が集中できない「背景」
集中力が途切れる原因には、いくつかのパターンがあります。
教師がいくら声を張り上げても、こうした内的要因には届きません。だからこそ、ただ「集中しなさい」と指導するだけでは逆効果になりやすいのです。
「行動」ではなく「心のサイン」に目を向ける
集中できない行動の裏には、必ず理由があります。
その理由を理解しようとする姿勢こそ、生徒との信頼を育てる第一歩です。
例えば、落書きをしている生徒。
「やめなさい!」と注意するのは簡単ですが、心の中では「授業についていけない」「当てられるのが怖い」などの不安が隠れているかもしれません。
ここで教師ができることは、「何かあるな」と、生徒の心のサインをキャッチすること。
その上で、叱るのではなく、「あなたに関心がある」というメッセージが届くと、子どもは次第に心を開いていきます。
信頼関係が集中力を生む
生徒は、安心できる関係の中でこそ集中力を発揮します。
「この先生は自分の気持ちをわかろうとしてくれる」
その感覚があると、生徒は行動を変えていく勇気を持ち始めます。
教師ができるのは、教え込むことだけではありません。
「理解しようとする姿勢」、つまり、生徒を一人の人として尊重しようとする姿勢そのものが、教室全体の空気を変えていきます。
教師自身も“訓練”で身につけられる
とはいえ、現場でこれを実践するのは容易ではありません。
忙しい日常の中で、一人ひとりの背景に耳を傾ける余裕なんてない――そう感じる先生も多いでしょう。
実は、こうした対応スキルは「センス」や「人柄」だけで解決するものではありません。
具体的な方法を学び、練習することで、誰でも習得できる“技術”です。
教師が「聞く力」や「伝える力」を磨けば、注意や指導がスムーズになり、生徒が自ら集中しようとする雰囲気をつくることが可能になります。
教師学という学びの入り口へ
「どうしたら授業に集中させられるか?」という悩みは、突き詰めると「どうやって生徒との信頼関係を築くか」という問いに行き着きます。
その答えを、体系的に学べるのが教師学です。
教師学は、ゴードン博士が開発した「親業訓練」をベースにした、教育現場のためのコミュニケーション・トレーニング。
単なる「声かけの工夫」ではなく、生徒との関係を根本から変える実践的な技術を学べます。
集中できない生徒を「困った存在」として捉えるのではなく、「成長のサイン」として受け止められるようになる。
その視点を持つことで、教師自身の指導もずっと楽になっていきます。
授業中に集中できない生徒に出会ったとき――
「どうして集中できないの?」と叱る代わりに、「君の中で何が起きているの?」と心をのぞく視点を持てたら、
教室はきっと、もっと生徒にとっても、教師にとっても居心地のいい場所に変わっていきます。